【大型練習船 (海上履歴対応)の共同利用などの新しい航海実習の提案-4年間の活動成果と最終年度に向けて- 】

◆目的

本サブプロジェクトは、「海事分野における高専・産業界連携による人材育成システムの開発」を行うにあたって、「新たな海事技術者に不可欠な知識・技能の育成」に重要に関わっている大型練習船教育に視点をおき、新たな海事技術者に不可欠な知識・技能として求められる船舶の業務・生活への適応力の育成システムの改善を目指し、大型練習船(海上履歴対応)の教育の高度化、効率向上の視点から検討し、提案を試みることを目的としている。
 上記目的達成の具体的手段として、以下の二点を思考材料として検討を行っている。

① 大型練習船(海上履歴対応)の試設計、共同利用のフィジビリティスタディ
② 共同利用大型練習船による航海実習等の教育効果の検討


◆平成24年度のサブプロジェクト事業の概要

平成24年度は、本プロジェクトを遂行していくための基礎データを収集するために、ヨーロッパおよびアジア諸国のSTCW条約で求められている三級海技士免許取得のための海上履歴を付与し、かつ、船員養成を行っている教育・訓練機関の練習船及び練習船実習の現状調査を行った。
成果として、「諸外国海上履歴及び練習船実習の現状調査」及び「航海実習検討サブプロジェクト会議」の両案件とも実施し、韓国を含む諸外国のSTCW条約で求められている三級海技士免許取得のための海上履歴を付与し、かつ、船員養成を行っている教育・訓練機関の練習船及び練習船実習の現状等について参考となるデータを得ることができた。
参考
 諸外国海上履歴及び練習船実習の現状調査については、(株)Class NK コンサルティングサービスに委託し、ヨーロッパ地域(インド、トルコ、クロアチア、アメリカ、ロシア、ポーランド、南アフリカなど)及びアジア地域(韓国、中国、台湾、シンガポール、ベトナムなど)を対象とし、調査を行った。


諸外国の練習船調査
          
諸外国の練習船調査

◆平成25年度のサブプロジェクト事業の概要

平成25年度は、上記の検討のための参考となるデータを収集するために、海上履歴に対応している国内の教育・訓練機関の大型練習船(一部参考のため海上履歴は対応していない中、小型練習船も含む)及び練習船実習や練習船の建造費、運航費等についての現状調査を行い、併せて、5000トン、3000トン、1600トンの3つの練習船モデルを設定し、当該モデルを利用した場合の実習評価し比較検討を行うための調査を委託すると共に、当該委託調査事業の内容や、平成26年度の本サブプロジェクトについて作業の方向性を確認、検討していくために「航海実習検討サブプロジェクト」会議を開催した。

「国内練習船の建造費、運航費等の現状調査」等の概要
調査内容

1)国内練習船(5000トン型、3000トン型、1600トン型の3級海技士の海上履歴付与型練習船を中心に、一部それ以外の小型練習船についても補足的に調査を実施)の以下の内容について、調査を行った。
①主要目  ② 訓練実態   ③運航管理実態  ④費用概算(建造費用、運航費用、入渠や保険等の管理費用など)

2)上記調査を踏まえて、モデルとなる練習船について、策定した訓練内容の実施可否の評価や建造費、運航費、その他の関連費用、必要要員等についても調査した。
モデルとなる練習船、大型練習船(総トン数5000トン型) 資格 国際航海に従事する、航行区域「遠洋区域」、中型練習船(総トン数3000トン型) 資格 国際航海に従事する、航行区域「遠洋区域」、小型練習船(総トン数1000トン型)、 資格 国際航海に従事する、航行区域「遠洋区域」


1.「国内練習船の建造費、運航費等の現状調査」調査・報告の仕様書(案)について

2.平成25年度「五高専・商船学科が共同利用する大型練習船(海上履歴対応)」の仕様策定の方向性について


国内練習船の建造費・運航費
          
大型練習船の建造費など

◆平成26年度のサブプロジェクト事業の概要

平成26年度は、これまでの収集データに基づき、次世代校内練習船モデルについて、その教育理念や履歴付与の必要性や可能性、航海訓練所大型練習船との役割分担等について検討を加え、当該モデルを共同利用した場合のスケジュール等について案を例示した。また、平成27年度の本サブプロジェクトについて作業の方向性を確認、検討していくために「航海実習検討サブプロジェクト」会議は連携5高専間においては、テレビ会議(GI-net)を使用して開催した。
 検討の中では、平成25年度から導入された大型練習船分割実習方式なども考慮し、次世代の校内練習船についての教育理念や履歴付与の必要性・可能性、大型練習船と次世代校内練習船との役割分担など意見交換し、併せていくつかの拘束条件を設定し、次世代校内練習船の共同運航を前提とした実習のモジュール化を取り入れたスケジュール案についても策定し、冊子としてまとめた。


校内練習船の共同利用検討

◆平成27年度のサブプロジェクト事業の概要

平成27年度は、サブプロジェクトのメンバーが大幅に変更され、これまでの3年間の成果を基に校内練習船の意義を再確認することから始まった。高専においても大学と同じような航海訓練所の分割実習方式(サンドイッチ教育)が始まり、高専の校内練習船の環境が本プロジェクトの当初とは大きく変化してきている。このような現状を踏まえて、練習船サブプロジェクトメンバーによってWedテレビ会議を通じて議論を重ねた結果、校内練習船と航海訓練所の練習船の位置づけを今一度明確にし、校内練習船の定義の再確認し、そして校内練習船と航海訓練所の練習船の違いを明確化することを校内練習船のあるべき姿を見出だすことを目的とした。さらに校内練習船の高度化も視野に入れ、各高専の商船学科及び練習船教員に対し、アンケートを行なった。アンケート結果は、以下の結果の通りである。これらの結果を基にサブプロジェクトメンバーでさらに議論を重ね、本年度最終検討会では連携4団体のステークホルダーからのメンバーも加え、今後の校内練習船について議論を重ねた。これらの結果から、具体的な提案までは見いだせなかったものの各教員が思い描いている校内練習船とはどのようなものかは見えたと思われる。来年度は、具体的に教員が授業・実習・研究で一人当たりどの程度練習船をしようしているのか、また校内練習船の学生に向けたアンケートも行い、校内練習性の有効かつ具体的な使用方法を提示したい。

検討会議

第1回 平成27年 9月2日 Webテレビ会議 5校高専メンバーのみ
 検討事項 校内練習船の意義
第2回 平成27年10月9日 Webテレビ会議 5校高専メンバーのみ
 検討内容 校内練習船アンケートに関する事項
第3回 平成27年12月7日 Webテレビ会議 5校高専メンバーのみ
 検討内容 アンケートの具体的な内容について
第4回 平成28年 1月15日 平成27年度航海実習検討サブプロジェクト検討大会 東京
 5校メンバーと連携4団体メンバー
 検討内容 アンケート結果とこれからの方針


◆平成28年最終年度のサブプロジェクト事業に向けて

 27年度の結果をさらに分析していくために、年度早々にクラス単位の航海実習だけではなく、教員個々の授業や研究活動における校内練習船の使用状況や学生から見た校内練習船への授業や実習での使用状況及び評価を集める予定である。それらの結果をもとに、最終的に商船高専としての校内練習船の在り方を一つだけではなく、複数提示する予定である。その際に、隻数だけでなく、使用方法を含めたこれからの校内練習船のあるべき形を提示したいと考えている。残り1年ではあるが具体的なものとして提示する予定である。


アンケート結果
校内練習船の教育上の必要性についてどのように考えますか。


校内練習船と航海訓練所の教育の違いについて、どのように考えていますか。


校内練習船の高度化とはどのようなものが考えられますか。または現在、実施していないが校内練習船で実施できたらというような提案がありましたら記入して下さい。


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