世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

海外インターンシップ報告(’09内モンゴルエコツアー)

目的
  1. 海外の企業や自治体のもとで働く体験をすることにより,滞在する地域に根ざした伝統文化や人々と触れながら,人と自然,人と人との共存の大切さを学び,国際社会の一員としての認識や責任感,行動力を身につける。
  2. 沙漠化という地球環境問題の最前線に住む人々と共に働く体験から,高専で学んだ知識や専門性の活かし方や,グローバル社会が求める新しい技術のキーポイントを見つける。
研修先
中華人民共和国 遼寧省大連市および内モンゴル自治区(昭和浩特市,鄂尔多斯市)
日程
平成21年8月5日(水)〜15日(土)
参加学生
中村友一(環境材料5年),熊本洋平(環境材料4年),深江恒祐(環境材料4年),野尻悠貴(物質4年)
引率者
栂伸司,清水義彦,豊嶋剛司,高松さおり,伊藤通子
概要
1.単位認定
 前年度実施の「エコツアー」を発展・充実させた「2009内モンゴルエコツアー」が,4年生の海外インターンシップとして2単位を認定されることになった。
2.日程
事前研修会
7月18日(金) 本郷キャンパスにて
講師:NPO法人エココミュニケーションセンター 森良氏
海外インターンシップ
8月5日(水) 移動(航空機にて 富山→大連→北京)
8月6日(木) 移動(航空機にて 北京→昭和浩特市)
8月7日(金) 希喇穆仁草原 観光牧場にて研修
8月8日(土)〜8月12日(水) 鄂尔多斯市達拉特旗
植林活動および沙漠化問題について環境局,学校,NPO法人等の視察,意見交換会実施
8月13日(木) 移動(航空機にて 昭和浩特→北京→大連)
8月14日(金) 大連市にてYKK株式会社見学
8月15日(土) 移動(大連→富山)
事後研修
8月24日(月)
8月27日(木)
10月7日(水)
10月15日(木)
本郷キャンパスにて
まとめ、振り返り、発表用資料作り
研修内容
8月7日(金)
訪問先
希喇穆仁草原 観光牧場
応対者
大地の子環境保護センター代表 チンゲル氏,観光牧場経営者等
内容
首省昭和浩特市から北100kmにある希喇穆仁草原へ移動した。希喇穆仁草原は典型的な高原草原であり,夏から秋にかけて草が青々と伸び,花が一面に咲く。ここ数年,現地政府の投資により旅行施設が充実してきている場所である。
内モンゴル民族の伝統的な住まいであるゲルに宿泊し,「大地の子」代表のチンゲル氏から内モンゴル自治区における沙漠化の経緯や政府の取り組み,住民の生活環境の変化,取り組みなどについて話を伺い,「大地の子」の呉氏やECOM代表の森氏らを交えて意見交換を行った。参加した学生たちは興味をもって熱心に耳を傾け,活発な意見交換を行った。
8月8日(土)
訪問先
希喇穆仁草原 観光牧場,寺院見学,草原の養羊農家
応対者
地元農家
内容
午前中は内モンゴル自治区にある寺院を見学した。午後には養羊農家で羊の解体を見学した後,乗馬などの騎馬民族の文化体験などを行った。夜は,チンゲル氏,呉氏,森氏とともに内モンゴル自治区における沙漠化や住民の生活について,再び話をする機会を設け,意見交換等を行った。
8月9日(日)
午前
移動
(マイクロバスにて 内モンゴル自治区南部・鄂尔多斯市達拉特旗)
午後
訪問先
共青生態園基地
応対者
達拉特旗環境局局長,環境局職員,基地研究員,モンゴル族農家
内容
共青生態園基地の研究員から,中国政府による植林の現状を説明してもらい,実際に植林地を歩きながら沙漠砂丘の緑化の成果を見学した。夕刻,農村部へ移動。中国政府から沙漠化防止のため放牧や遊牧を禁止されている現状について話を伺った。
8月10日(月)
訪問先
共青生態園基地,クブチ砂漠
応対者
達拉特旗環境局局長,環境局職員,基地研究員
内容
共青生態園基地において,ポプラの植林活動を行うとともに,沙漠化進行地域の視察を行った。内モンゴル自治区に位置するクブチ砂漠は,総面積約1万8,000㎢の東西に長く伸びる沙漠である。北西の季節風により,流砂は西から東へ移動し,住民に対し深刻な被害を与えている。クブチ砂漠は自然要因から形成される沙漠だが,中国政府は,ここ数十年の過放牧や過開墾など人為的要因が沙漠が急速に拡大する原因だと考えている。夜は,共青生態園基地に戻り,夜空の観察を行った。満天の星空と地平線から地平線に続く天の川など,プラネタリウムのような星空に感動した。
8月11日(火)
午前
訪問先
チンギス・ハン陵
応対者
大地の子環境保護センター代表 チンゲル氏
内容
モンゴル帝国の創始者であるチンギス・ハンの陵墓を見学した。清の時代まではモンゴルの地にあったが,時代の変化により内モンゴル自治区へと移動した。一民族が長い年月の間守ってきたチンギス・ハンが眠る聖なる土地に立つ陵墓に,学生も感動を覚えていた。
午後
移動
(マイクロバスにて 鄂尔多斯市→昭和浩特市)
8月12日(水)
訪問先
内モンゴル博物館,内モンゴル化学工業職業学院
応対者
校長,各学科教員,学生10名
内容
中国,内モンゴル自治区の文化などに関する講義を受け,現地学生との交流会に参加した。学生は,「豊かさ」に対する価値観や「環境に配慮すること」に対する考え方の違いを実感。沙漠化は現地だけの問題ではなく,世界が協力して食い止めなければならない問題であるということに気付いたようである。
8月14日(金)
訪問先
大連YKK株式会社
応対者
大連YKK AP社総経理 金岡氏,同社副総経理 米屋氏,ジッパー社工場長・製造部長 浅野氏,鈴木氏,有田氏,同社管理部 長谷川氏他
内容
YKK大連工場の概略説明の後,ジッパー社と建材社の両社より,企業としての環境対策の説明をしていただいた。その後ジッパー社の工場見学,最後に質疑応答を行った。
≪説明概略≫
 YKKグループは,ファスニング事業と建材事業,工機事業の3事業グループによるグローバル事業経営を展開し,世界の約70カ国/地域で事業活動を行っている。事業活動が環境に与える影響は地球規模のものとなっていることを認識し,環境問題を経営の最重要課題のひとつと捉え,1994年9月に『YKKグループ環境憲章』を制定し,グループ全社を挙げて環境対策に取り組んでいる。
 事業を営む上でメーカーの責任として,事業活動のすべての分野において,商品の設計から製造・廃棄・回収・リサイクルにいたるまでのあらゆる段階で環境課題を認識し,環境政策の執行と環境マネージメント監査を徹底しながら,グローバルな環境経営を推進している。
まとめ
 中国大陸の沙漠化は,紀元前から進行し続け,近年では中国の近代化に加え,地球温暖化の影響も相まって,主要な地球環境問題になっている。
 中国大陸の沙漠化の最前線である内モンゴル自治区を,ESDのフィールドと位置づけた理由は,富山では黄砂の関心が高く,また富山空港から中国大連市までの直行便があることだけではない。内モンゴルの自然環境と固有の社会システムが,「多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための」という本事業の目的に最も適していると考えたからである。
 富山地域の産業界がグローバル化を推し進める中,富山周辺で過ごしてきた学生たちに求められるのは,広く世界に目を向けることである。参加した学生たちは皆,内モンゴルの広大な自然と悠然とした時間の流れを目の当たりにして,空間的な広がりと時間軸の長さの感覚が,自分達のものとは大きく異なっていることを体験し,「知ること」「考えること」そして「行動すること」の大切さを学んだと語る。
 本事業の継続的な実施に向け,研修内容の更なる精選と充実を進めたい。
2010.3.31