世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

成果報告(デンマーク・オルボー大学)

日時
平成22年3月8日(火)~3月13日(金)
場所
オルボー大学
出張者
畔田博文,保前友高,定村誠,伊藤通子
1.目的
 デンマークは,本GP取り組みの1年目に訪れ,そこで得た知見を技術者ESD開発の参考とした経緯がある。そこで今回の訪問では,ESDのための教育手法としてPBL(Problem and Project-Based Learning)を用いて取り組んでいるオルボー大学を訪問した。オルボー大学では,「持続可能性とPBL教育センター(Center for PBL & Sustainability)」を訪れ,本校がGPによって取り組んできた技術者のためのESDプログラム開発の理念,開発の方向性,教育手法,成果について報告を行い種々の意見交換を行う。
2.日程と応対者
3月9日(火)
Aalborg University(オルボー大学Fibigerstraede校舎)
Introduction to the Aalborg Model and Staff Development
Anette Kolmos氏(phD,Professer in Problem Based Learning and Engineering Education)
Center for PBL & Sustainability
Jette Egelund Holgaard氏(Assoc Prof. Department of Development and Planning)
Shota Furuya氏(Department of Development and Planning)ほか数名
3月10日(水)
Aalborg University(オルボー大学Strandvejen校舎)
Presentation of the first year
Palle Qvist氏(Associate Professor)
Department of Biotechnology – Study Programs and Projects
Per Møldrup氏(Professor)ほか数名の教員,技術職員及び学生
3月11日(木)
Aalborg University(オルボー大学Fibigerstraede 校舎)
Department of Production – Study Programs and Projects
Kim Bohn氏(Associate Professor)ほか数名
3月12日(金)
Hasseris Gymnasium(ハッセリス高校)
ハッセリス高校の教育手法の紹介と授業の視察
Anders Bach Jensen校長,他数名の教員や生徒
3.内容
アネット氏と/1974年創立当時からの校舎
(オルボー大学)

土壌汚染に関する問題解決を,グループで計画し,
調査し実験してデータを取るも失敗,教員と問題点を議論
(オルボー大学)

教育に熱心で優しい校長先生を囲んで/
明るく開放的で自由なレイアウトの学習ブース
(ハッセリス高校)

グループで自主的に学ぶ生徒たち
(ハッセリス高校)

 本GPの概要説明を行い,2年前の視察が本校のESD開発にどのように活かされたか,そして本研究の3年間の成果を紹介した。工学系の学生に対するESDにおける重要なポイントとして,1.現代社会が抱える複雑な社会的課題に取り組む意欲や知恵をもった学生を育てることを目的とする,2.従来型のクラシックな教授方法ではそのような学生の育成は難しく,PBLのような構成主義的教育手法を使った,実際の社会問題に取り組むような教育プログラムの中で学際的な分野を扱っていくことが大切である,3.オルボー大学ではPBLを基本とした「オルボーモデル」という独自の教育プログラムを開発して世界に発信しているが,日本の文化や社会的文脈の中で教育効果が得られるような「富山高専モデル」を開発することの重要性についてなどの点で,認識で一致した。
 また,オルボー大学では,まさにESDや環境安全教育をPBLで進めるための教育研究センターを立ち上げているところであり,今後,工学系のESD教育プログラム開発の視点や方向性を同じくする本校と,更なる協力関係を図っていくこととなった。
 2日目は,特に1年生を対象とした教育プログラムの説明をしていただき,実際に学生たちの学びの場を見学し,教育に携わる技術職員や学生たちと意見交換を行った。その結果,本校のESD教育を受けた学生たちの声や学習効果との類似点が多くみられ,同じ課題を共有していることが明らかとなった。今後の両校の教育に関する学術的なレベルの情報交換の意義を確認した。
 3日目は,主にこのような教育を展開していく場合の組織的な課題等をテーマとして,本GPにおける教育プログラムの推進体制を紹介し意見交換を行った。重要な点として,学生に関する問題はもちろんのこと,教員のトレーニングに関する問題と,学校の推進体制(上層部の方針)及び,地域の企業との連携が挙げられた。特に地域企業との教育的な連携は慎重でなければならず,協働教育の中で学生が単なる労働力として扱われないように,学校への信頼や協働教育への理解を得る努力をすることの重要性が強調された。
 4日目は,ハッセリス高校を訪れ,教育手法の紹介と授業の視察,学生へのインタビューを行った。普通コースと国際コースを有する高校だが,主に国際コースでの授業を中心に,アジア,アフリカ,中東など世界中の多様な文化背景をもつ生徒たちが相互に学び合う教育を視察した。1クラス28人で教員との距離が近くきめ細かな教育をしている現状や,明るく開放的なオープンスペースには生徒が自由に使える学習ブースがたくさん設けてありグループで楽しそうに学びあう姿が印象的だった。また,高校の日常生活そのものが,多様な文化を受容しその中で切磋琢磨されていく環境となっていた。生徒たちの自主性を重んじ,学ぶことを楽しむ雰囲気があふれていた。技術者ESDとして,文理融合や文化的多様性の中で学ぶことを取り入れた本校の取り組みの方向性に対する多くの示唆を得ることができた。
2010.3.13