世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

授業へのESD導入:国語・表現教育への新しい視点の導入の試み

日時
平成21年10月1日(木)~平成22年2月8日(月)
毎週火曜  1,2時間目,5,6時間目
毎週金曜  3,4時間目
場所
本郷キャンパス 213号教室,205教室など
履修学生
電気工学科・物質工学科・環境材料工学科4年生(105名)
日時
平成21年4月7日(火)~平成22年2月15日(月)
毎週2単位相当時間のうち 1/3程度
場所
2年生各教室
履修学生
全学科2年生 159名
目的および内容
1. 目的
 持続可能な社会の形成に自覚的な人材育成に関わって,以下のような視点から研究考察を進め,授業の実践の中にいかすことを目的とした。
2. 内容
(1)社会的問題意識を喚起する小論文指導
 従来,高等専門学校教育における技術者に必要な表現スキルの育成という観点から,文学講読の授業時間の中に小論文指導を位置づけ,自主制作のテキストを用いて,文章表現トレーニング・技術系小論文演習を行ってきた。文章という線状の表現形態の特質を理解させ,あわせて抽象用語を操るスキルを向上させる基礎トレーニングの上に演習的課題を課す形で構成してきた。
 一昨年度から,持続可能な社会の構築への自覚を促す観点から,市民生活を社会の動きの中に位置づける思考を組み立てるために,新聞の投書欄を題材として意見をまとめるトレーニングを試みている。
 昨今の社会問題は,複雑な現代の社会構造と関わり,多様な断面を見せているが,いずれも地球環境の保全,情報化社会への対応,あるいは経済・産業を中心としたグローバル化の流れと深く関わっている。地域社会や生活に身近なところに題材を求め,社会の動きの中に自分の生活を位置づける視点が得られるような小論文指導に取り組んだ。
(2)国語教育への演劇的な視点の導入
 地域社会における人間関係の結び方が変化し,少子化の進行とともに社会的な自己形成のあり方そのものも問い直されるようになっている。社会の国際化ということもあり,他者の考えやその背景と自分のそれとを対照しながら,お互いを尊重する姿勢を育成することがますます求められている。平田オリザ氏がいう「対話力」の形成に関して,自覚的な実践を教育現場に導入する必要を感じている。報告すべき具体的な取り組みや成果はまだ乏しいが,従来の戯曲を読むような形態ではなく,どのような実践が可能か考察を進めている。教科教育のみならず,特別教育活動の中での取り組みも考えられる領域であり,今後実践例を積み重ねて報告の機会を持ちたい。
(3)地域社会と言語(方言への視点)
 明治以来,共通語を標準とした意思疎通ができるように方言矯正の運動もあった。それは中央集権的な国家の形成,経済・産業力振興という時流によるものであり,全国的に同水準のインフラ整備がすすみ,地域による経済格差が解消されるといったプラスの側面ももちろん生んだ。戦後は国土の均衡ある開発という言葉に受け継がれたものである。一方その結果,地域文化は保護されるべき文化財であるかのような状況が発生してもいる。現代においては地域主権の確立という政治・経済的な要請とも相まって,地域文化の育成・発信がむしろ奨励されているところである。昨今地産地消という言葉も盛んに使われだしている。
 そのような状況下,地域の言語文化とも言うべき「方言」の存在が等閑にされている感がある。生活語としての方言の習得は当然行われているが,一方生活スタイルの変化とともに,変化の中で失われていった物や形や情を表す言葉は失われていくことになる。生活の近代化とともに失われていった物はともかく,形や情を表す言葉は,単に懐かしさという情緒に関わるのみならず,地域社会における人の心の結び方そのものである。
 古典などの授業の中では,方言周圏論に触れつつ古代の言葉が現代でも命脈を保っていることを指導している。また折に触れて,方言語彙・アクセント・文化的な考察を授業で取り上げるようにしている。現代の人間生活は,もちろん地球社会全体との関わりの中で営まれているが,生活語としての土地の言葉を意識させることは,地域文化の中に,具体的な生活の形をとることを浸透させる。持続可能な開発・消費は,地域生活が円滑に営まれることを通して実現されることを理解する一助になっているはずである。
2010.2.15