世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

授業へのESD導入:物質工学科実験におけるESD導入の試み~安全教育を中心として~

日時
平成21年10月1日(木)~平成22年2月8日(月)毎週月曜4~7時間目
場所
本郷キャンパス 物質工学科棟3階学生実験室
履修学生
物質工学科3年生(44名)
担当
畔田博文,川淵浩之,戸出久栄
目的および内容
1. 目的
 安全や環境に配慮したものづくりは私たちが持続可能な社会を構築していく上で重要なひとつの要素である。そこで,本取組ではこれまで行ってきた有機化学実験における安全教育を強化し,自ら安全や環境に配慮し,安全や環境について考えることができ,作業環境や作業後の改善や廃棄物の適切な後処理を正しく出来る力の育成を目的とした試みを行った。
2. 内容
 私たちの身の回りには多くの有機化合物が存在し,私たちは豊かな生活を得るためにこれらの有機化合物を巧みに利用している。しかし,これらの化合物は取り扱いを間違えると人の生死にかかわる事故や公害をもたらす元となり得る。そこで,有機化学実験では実験を行う前の導入としてはじめに安全教育に関する教材とアンケートシートを用い安全に配慮する事の重要性の確認と安全に関する意識調査を新規に行った。その後,実験テーマごとの安全教育を実験の説明に必ず加えるとともに実験終了後ヒヤリハットシートを提出してもらうことにより,各実験における安全の再認識を促すとともに安全に関する振り返りを行った。実際に有機化学実験で行った内容を以下に示す。
 1.有機化学実験の概要説明,2.ガラス細工,3.単蒸留,4.水蒸気蒸留,5.エステル合成,6.アセトアニリドの合成,7.抽出による有機物の分離と分析
 安全に関しては,はじめに有機化学実験の概要説明では実験室に入る前の心得や保護具の意味についての解説を行い,保護具の適切な使用を促すとともに実験中の整理整頓の重要性について説明を行った。ついで,ガラス細工においてガラスの取り扱い,バーナーの取り扱いと注意事項,怪我をした場合の対処法(応急処置と責任者への迅速な報告)をとおして扱うものの性質を把握することの大切さと事故が起こった場合,その被害を最小にととどめるために大切なことについて解説を行った。単蒸留と水蒸気蒸留では,蒸留中に起こる事故の原因とその対策についての解説を行い,操作によりどんなことが起こるのかを予測しながら実験を進めることの大切さについて解説を行った。エステル合成,アセトアニリド合成では,試薬の性質,反応の仕組みと反応操作との関係を熟知しておくことの大切さについて解説を行った。また,試薬を用いる実験については廃液の取り扱いについての説明を行った。
 以下に,実験後学生が記入したシートの一例を表として示す。
 記入結果より,事前に注意を受けた事項以外のことでヒヤリとしたことが多いということが分かった。この結果から,事前に説明をうけた事項については安全に配慮し実験を進めることが出来るが,その他の初歩的なミスでハットして気付くことが多いようである。このことから,自ら気付き安全に配慮し実験を行えるようになるためには,振り返りを行いハットした事項について再確認を行い個人に蓄積するとともにこれらを共有することが重要であると考える。
 今年度の有機化学実験では注意を促しながらヒヤリハットシートを記入させることにより,実験中の保護具使用の徹底がなされるとともに,切り傷などの事故や器具を破損する学生の数が例年よりも少ないように感じた。また,廃液の取り扱いについても不用意に洗い場に持っていき片付けるのではなく正しい前処理をきちんと施し片付けることの徹底や,不明な点については勝手な判断をせずに指導教職員に尋ねるなどの行動がかなりできるようになったと感じた。以上のように,有機化学実験における安全教育を強化し,これにより安全とは何か,どうすれば安全を確保できるのかということを自発的に考えさせるとともに,安全を確保するための行動のきっかけ作りを行うことができたと考える。今後この視点を実験室内のみでなく地域,世界へ向けることができればESDへつなげることができるのではないかと考える。
表1 学生によるヒヤリハット記入一例
何をしていて 何が起こって どうなった
1 実験の片づけ時 机の端にあることに気付かず落として 割ってしまった。
2 温度計をゴム管に通そうとして 力が入りすぎて 温度計が割れた
3 試料を湯浴で温めていて 不安定になった 試料溶液がひっくり返った
4 塩酸が入っている三角フラスコのゴム栓を片手でとろうとして ビーカーが倒れて 塩酸がこぼれた
5 ビーカーの洗浄中 洗剤で手を滑らせ ビーカーを割った
6 実験器具を取り出すとき 器具が破損し 指を切った
7 分液ロートのガス抜きをしていて コックが少しずれて 液が少しもれた
8 ロ過をしたあと 直接匂いを嗅いで むせた
9 分液ロートを振っていて 栓が外れ 液体がこぼれた
10 試験管中の液体を加熱していて 水溶液が沸騰して手に液体がかかり 軽い火傷を負った
2010.2.8