世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

授業へのESD導入:全年齢層を対象としたロボットプログラミング教育の試み

事業一覧
(1)電気工学科3年生学生実験(平成21年4月1日~平成21年9月30日)
(2)公開講座「ロボット相撲大会(平成21年7月30,31日・本郷キャンパスオープンラボ2F)
(3)出前公開講座(平成21年8月5日・大沢野公民館)
(4)WRO富山県予選(平成21年7月19日・鵜坂公民館)
(5)ITサマーキャンプ(平成21年8月8,9,10日・山田交流促進センター)
(6)ロボットプログラミングコンテスト(平成21年10月24日・富山国際会議場)
目的および内容
1. 目的
 プログラミング教育は情報処理教育の一部として重要であるだけではなく,論理的な思考を醸成し,先を見通す力をつける訓練としても非常に有効である。このことは自分たちが生活する社会を将来どのように構築してゆけばよいのか洞察する力を養うことにつながり,持続的な社会を支える原動力となると考えられる。しかし従来のプログラミング教育はプログラミング言語の文法やアルゴリズムを教えることに重点が置かれており,学生たちのモチベーションが上がらないのが現状である。そこでわれわれは幅広い年齢層にわたってプログラミングに対する興味を持続させることを目的として,LEGO MindStormsを用いたロボットプログラミング講座を企画し,県内のNPOなどを協力して普及を図ってきた。本報告ではこのような目的を実現するために今年度開催した授業やロボットコンテストについて報告する。
2. 内容
 今後,高齢化社会が進む中,ロボットは社会にとって不可欠な道具となっていくことが予想され,持続可能な社会実現のためにはロボット技術者を確実に育成していかなければならない。このような社会的要請を受けてロボット製作をモチベーションとした教材が多数開発されている。我々はこのようなロボット教材の中でも,自由な発想を発揮できること,全年齢層にわたってロボットへの興味を満足させることができるという観点からLEGO MindStormsを活用したロボット教育を行っている。特に生涯にわたる教育の重要性に鑑み,全年齢層に渡ってロボットを利用したプログラミング教育講座やコンテストを開催し,それぞれの年齢層,知識的なバックグラウンドに対応した教育法を開発し検証を行った。
 まだプログラミング経験のない小学生(高学年)に対していきなり難解なプログラミング言語を教えることは却って拒否反応を呼び起こすことになりかねない。したがって小学生に対してはロボットに対して興味を呼び起こすことを目的とした「ロボット相撲大会」を公開講座および出張公開講座で開催した。公開講座への参加者は述べ40人,出張公開講座は15名が参加した。またプログラミング経験のない中学生に対してはライントレースロボットを題材として公開講座を行っている。
 プログラミングができる小学生,中学生に対しては世界規模のロボットコンテストWROの富山地区予選を開催した。WROはLEGO MindStormsを用いたロボットを使って競技を行うコンテストで,今年で6回目になる。今年度は初めて富山地区予選を開催した。富山県選出のチームはここ数年連続して世界大会に出場しており,今年も富山県から出場したチームが韓国で開催された世界大会で8位に入賞した。この例に示されるようにロボットプログラミングは小学生からも十分に可能であり,今後さらに継続してゆくことにより高度な技術者を育成することが期待される。
 プログラミング言語の学習過程において人間のイメージ指向の思考過程とコンピュータのシーケンシャルな処理のミスマッチングにより学習が進まなくなるという問題が起き,学習意欲が低下してしまう。ロボットプログラミングはプログラム経験がない高校生,高専生に対してはコンピュータの内部処理がロボットの動作となって現れるため,非常に理解しやすいプログラミング教材となる。われわれは富山インターネット協議会として高校生,高専生にロボットプログラミングの楽しさを教える「とやまITサマーキャンプ」を開催した。このキャンプは2泊3日で与えられた課題の競技をこなすロボットを製作するものであり,今年は13人の高校生,高専生が参加した。また本校の学生に対しては電気工学科3年生の電気工学実験IIIのテーマとして40名の学生にライントレースロボットを対象としてプログラミング教育を行った。このテーマには遊びの要素が入っているため,学生には大変受けが良いようである。
 企業などに就職して情報産業などで実際にプログラミングを行っている社会人,特に新入社員や入社後数年の社員にとってはロボットプログラミングは有効である。富山県高度情報推進協議会ではこの様な技術者の技術交流を目的としてとやまITフェアにおいてロボットプログラミング競技会を開催した。この年齢層の技術者にはただプログラミングしてもらうだけではなく,まず最初に課題の分析を行ってもらい,その課題を解決するためのソリューションをコンセプトシートとして提出してもらい,その内容も競技会の評価の対象とした。本年度は競技課題として起伏や折返しがあるライントレース競技を行った。この競技会には学生も参加することができ,学生と社会人が交流する場ともなっている。
 これまでの実践例からわかるようにLEGO MindStormsを用いたロボット教育は幅広い年齢層にわたり論理的思考を持ち持続的な社会を支える技術者を養成する教育法として有効であることがわかった。
2009.10.29