世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

第16回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム(ASET16)(中国・大連市)

主催
(独)国立高等専門学校機構,東北大学(中国)
主管校
富山高専,石川高専,福井高専,鶴舞高専,長岡高専
共催
長岡技術科学大学,豊橋技術科学大学,NPO法人エコテクノロジー研究会,大連東軟信息学院
日時
平成21年10月21日(水)~23日(金)
会場
Dalian Neusoft Institute of Information(大連東軟信息学院),中国大連市
参加人数
100名
1.目的および内容
ASET16

 産業革命以降,科学技術は,その発展により人類に大きな利便性をもたらしてきた。しかし,経済成長・工業化に伴う資源消費と環境問題は,世界の持続可能性に大きな影響を与えている。持続可能な社会づくりを推進するためには,現在の経済社会システムを変革するとともに,イノベーションが不可欠であり,その担い手の育成が重要である。そのような技術者を養成する一環として,中国大連市において開催された第16回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム(ASET16)に参加し,研究成果を国際シンポジウムで発表するとともにアジアの研究者や学生達と交流を深めることにより,学生のグローバルな視点の養成を図った。
 また,教員はこれまで富山高専で行ってきたESD活動の報告を行うとともに,アジア地域におけるESD活動についてNoor Azian Morad氏(University Technology Malaysia,マレーシア),Kim Young-Duk氏およびLee Seung- Mok氏(Kwandong University,韓国),Kang Daeseok氏およびSung Kijune氏(Pukyong National University,韓国)の講演者と各大学等におけるESDに関する取組みや環境に配慮した技術のあり方等について情報収集・意見交換を行った。
スケジュール
日程 会場 時間 内容
10月21日(水) 大連セントラルプラザホテル 15:00~ 参加登録
18:00~ 歓迎会
10月22日(木) 大連東軟信息学院(図書館6階及び日本学科棟) 9:30~ 開会の挨拶
10:00~ 基調講演
12:00~ 昼食及びポスター発表
18:30~ 夕食(大連セントラルプラザホテル)
10月23日(金) 大連東軟信息学院(日本学科棟) 9:00~ 招待セッション及び基本セッション
12:00~ 昼食
13:00~ テクニカルツアー
18:00~ 送別会(farewell party)
2.参加学生の感想
ASET16

 今回,本郷キャンパスから6名,射水キャンパスから3名の学生がASET16に参加した。国際シンポジウムで研究発表を行うとともに海外の研究者と交流して学んだことについて報告してもらった。
ASET16に参加し,海外の研究者と交流して学んだこと
機能材料工学専攻2年 岡崎琢也
 私は,前回の金沢で行われたASET15に参加し,今回のASET16に参加させていただくことができた。前回は,日本国内で行われたASETだったので,パーティ内等で国際交流をするにしてもあくまで日本の文化の中で招待の雰囲気の中であった。しかし,今回のASETは中国国内だったので,到着時から帰国まで中国の雰囲気を体験することができた。グローバルな視点でものを見るためには,実際に様々な文化を体感して,知っていなければならない。自分の国にずっと篭っているだけは,様々な国の技術課題や,有用な技術について深く考えることはできないと思う。そこで,ASET16において中国の雰囲気を体験することで,そこに住む人達の国民性や,抱える環境問題の一部など,多くのことを知ることができた。そして,実際に研究者と交流することで,相手の文化を肌で理解しながらコミュニケーションができたと思う。発表では,これまでの研究内容を各国の人に伝えるために英語で資料を作った。英語は得意ではないが,自己満足になりがちな日本語の表現と違って,顔も知らない人に伝えるための言葉として,様々な手法を学ぶことができた。これまでの学会発表では,外国の人が居ることもなく,英語で質問されることはなかったが,今回のASETで初めて英語のディスカッションが出来て,多く課題の残るいい体験になった。マレーシア人の方が,質疑応答で,自国の水環境の浄化に,我々の研究している技術を適用できないか考えておられ,いくつか質問をいただいたが,納得していただける回答はできなかった。そこで,英語力がいかに重要で,大事なものかを痛感した。また,そういった中国だけでない各国をめぐる環境問題を目の当たりにできた,すごい機会であったと思う。
機能材料工学専攻2年 髙場雅世
 ASET16では英語での口頭発表ということで,まずプレゼンテーションの作成や練習および心の準備が大変でした。プレゼンテーションを作成する際は,単語や英文は簡単なものを使用するようにし,練習する際には発音などに気をつけるようにしました。
 大連までの移動では,国際線が初めての上,飛行機に乗った経験も少ないため,搭乗,出国手続きなど分からないことばかりでした。大連に到着し,空港の外へ出ると砂埃などで視界が悪く,のどがイガイガしました。
 食事は,食あたりを防ぐために,油の多いものや生野菜を避け,饅頭や点心,果物を中心に食べました。日本とは調味料が異なるのか,変わった香りがしましたが美味しかったです。
 発表は,直前まで練習したためか,ほぼ練習したとおりにできましたが,質疑応答では緊張してしまい,何を質問されているのか理解できませんでした。座長に質問を日本語に訳して頂いて,何とか答えることができました。授賞式にて「Good Student Awards」の賞状と賞品を頂きました。授賞式の後,中国の学生の方々と英語での自己紹介を行ないましたが,中国または彼らの自己紹介の形式にやや戸惑いました。
機能材料工学専攻2年 長森拓也
 今回のASET16の発表を通じて,国の違いによる研究への取り組み方の違いを感じた。国が違えば環境も違うので,それに対応する技術なども変わるのだという簡単な話だが,実際にそれを見たり聞いたりできたことは,国内ではできないとても新鮮な経験であった。発表中に,国境を越えて質問しあっている光景などを目にして,自分が参加しているのが国際的な学会なのだと妙に実感したのを覚えている。特に,「自分の国では○○なのだがこの技術はその点どうなのか?」といったような質問は,国内の学会ではまずほとんど見られないだろうやり取りであるように思う。
 また,英語で行った口頭発表では,自分が考えていることを相手に伝えることの難しさを改めて感じた。自分は正しく伝えた,表現したつもりでも聞き手に伝わっていなかったり,逆に質問者の意図を自分が正しく読み取ることが出来なかったりと,うまく伝えられないこと,理解出来ないことが,中途半端な自分の英語力を省みるいい機会になったように思う。ASET16では,会場の補助スタッフが日本語を専攻している学生だった。彼らは日本語を学ぼうという気概に溢れていて,会場のいたるところで日本人を取り囲んで日本語での会話に挑戦していた。そのあふれんばかりの行動力を目の当たりにして,その大胆さというか,目標に向けて突き進んでいく力強さを見習わなければならないと感じた。
 他にも,フェアウェルパーティーでは4ヵ国語で司会が行われたり,オペラ顔負けの歌手が出てきたり,大連は思っていたより都会だということが分かったり,水族館に行ったりと内容的には非常に充実したものだった。今後また参加することがあれば,それまでにより英語力をつけて,しっかりと意思疎通が図れることを目標に取り組んでいきたい。
機能材料工学専攻1年 中條友樹菜
 ASET16に参加して,国際的なコミュニケーション能力の重要性に気づいた。海外の学生や研究者と交流するにあたって英語で話す必要があり,相手に伝えたい事を的確に伝えられない事が多々あった。それでも,通訳を介するより相手の顔を見て直接会話する方が意思疎通を図るには有効であると思った。言語や文化が異なっても,環境に関わる技術や研究に携わる者であるという事は共通しており,研究に対する関心や熱意を感じ取ることが出来た。しかし,互いの研究内容や環境技術について深く議論するためには,共通して認識できる言語を習得する必要があるとも思った。
 世界で共通している環境問題や課題もあれば,例えば黄砂の大気汚染のように,その国や地域特有の問題もある。このような課題を,その国だけで解決しようとするのではなく,地球全体の問題として捉え,異なる立場から多角的に取り組むべきであると思う。そのためにも,ASET16のようにグローバルな視点を養える機会が益々増えていくことを期待したい。
 またこのような国際的な交流の場に参加する機会があれば,ASET16で学んだ事を生かして,より有意義な時間にしたい。
機能材料工学専攻1年 金山大祐
 昨年の10月21日から23日にかけて,中国の大連で「16th Asian Symposium on Ecotechnology(ASET16)」が開催されました。今回が初めての学会ということ,場所が中国であり日本語がほとんど通じない環境であったことから,大連での初日は全く異文化に触れることができず,緊張の連続でした。2日目の自分の発表では,至らない点はたくさんありましたが,なんとか発表を終えることができ,ASETや中国の文化を楽しむゆとりができました。
 ASET16で感じたことは,異文化(中国・大連の文化)に触れる面白さです。一番驚いたのは食事で,食べきれないほどの料理が大皿にのって次々にテーブルに運ばれてきたことです。日本では,客は出された料理を全て食べるのが礼儀なのに対して,中国では,客が料理を食べきってしまうと,もてなしが不足しているということになり,さらに料理が運ばれてくるそうです。当たり前ですが,国が異なれば文化も異なるということを改めて実感しました。今後,日本が成長していくためにはグローバルに物事を捉えて,様々なニーズに応えていく必要があると思います。また,その中で高専の学生もグローバルな物の見方などを養っていかなければいけません。ASET16で僕は,多少なりとも異文化に触れることによりグローバルな物の見方する大切さに気づけたと思います。
機能材料工学専攻1年 澤井光
 今回私はASET16に参加し,海の向こう中国,大連にて研究成果の発表を行った。ここでは国や専門分野の異なる多くの研究者達が,エコテクノロジーを一つのキーワードに活発な意見交換を展開しており,それに触れることで多くの考え方,ものの見方を学ぶことができた。またASETに参加することで,その広角的な思考,視野をエコテクノロジーというキーワードで結び,グローバルで広角的な思考,視野を育むことができた。
 また今回のASETでは研究発表の場以外でも多くの人々,文化とふれあうことができた。とくに発表会場となった東北大学東軟情報学院の学生さんとのふれあいは大きく印象に残るものであった。彼らは非常に積極的に我々日本人とのコミュニケーションを望み,流暢な日本語によって意志の交換を成していた。彼らのこのコミュニケーション能力は羨望に値するものであり,私にとって彼らとの交流が大きな刺激となったことはいうまでもないだろう。この経験により,異文化を恐れず排除せず,むしろ積極的に受け容れることこそ,グローバルな人間,ひいてはグローバルな社会形成に必要であると強く感じた。
 地球規模の環境問題が慢性化しつつある昨今,文化,国境などの境を取り去り,このようなグローバル化された視点・思考でもって情報交換等を行い,協力して問題に取り組むことは必須である。私は今回のASET参加を契機に,広い視野とグローバルな視点をもった研究技術者を目指したいと考えるようになった。
制御情報システム工学専攻2年 太田光輔
 ASET16を通して,環境に関する様々な研究を知ることができた。専門分野は全く異なるが「エコテクノロジー」をキーワードに国境を越え多くの研究者たちが発表し,環境に関する先進的な研究に触れることができた。
 また,今回のプレゼンテーションはすべて英語で行われた。私がプレゼンテーションを行った際に中国人の学生が研究に関して質問してくれたが,私はうまく受け答えすることができず,自分の英語力の無さを痛感させられた。環境問題は国によって抱える内容が異なるが,例えば中国で発生した黄砂が日本へやってくることがあるように,国際的に協力し対処していく必要がある。その際に,先進的な研究や技術はもちろん必要であるが,最も重要なのはお互いのコミュニケーションである。したがって,今回開催されたASETのような国際的な交流の場はこの先さらに重要になると思う。
 大学での施設案内などをしてくれたのは日本語を専攻している現地の大学生であり,彼らは積極的に私たちと日本語でコミュニケーションを取っていた。私も彼らの積極性と外国語に対する意欲的な姿勢を見習おうと思った。
 今回のASETに参加したことで国際的な環境に関する視野が広がり,また初めての中国だったので良い異文化交流の場になったと思う。今後は,ASET参加を機にグローバルな視野を持つエンジニアになることを目標としたい。
制御情報システム工学専攻2年 鍛治祐希
 初日には,大連セントラルプラザホテルに向かった。途中にはバスから街の様子を見ながら大連の特色を学んだ。2日目にはまず基調講演を聴講し,中国の開発におけるさらなる研究の必要性と高専の国際化の重要性を学んだ。2日目,3日目には学生と研究者による研究発表が行われた。ポスターセッションでは評価員や他の参加者が発表に対して真剣に取り組み,質問や議論を活発に行った。プレゼンテーションでは各国の参加者が研究内容を紹介し,各自が興味のあるセッションを国籍関係なく聴講していた。これらの発表は全て英語で発表と質疑応答が行われ,参加者の英語コミュニケーション能力の高さをうかがい知ることができた。
 昼休憩の空いた時間には東軟信息学院の学生にキャンパスを見学し,学院は学習施設だけでなく生活施設も豊富にあった。車や電化製品,各種食堂など,衣食住に関する施設,部活動等に利用されるグラウンドやコート等のスポーツ施設等,学校での学習と生活を全面的にサポートする体制を見て取ることができた。
 このシンポジウムでは,エコテクノロジーに関する先進的な研究を知ることができ,今後の研究活動に対する良い刺激となった。また,英語にも関わらず様々な国の参加者が意見を言い合い,英語に対する熱心な姿勢を感じ取ることができた。それと同時に,各国の教育や経済の発展について知識だけでなく直接見聞きすることにより,それぞれの国に対する理解をより深める事ができた。日本での研究や仕事だけに捕われず,英語の必要性について今後より一層強く認識する必要性があると感じた。
海事システム工学専攻2年 市川伸彦
 本科の練習船時代にハワイへの遠洋航海に加え,外地に行くことが出来る機会を得られたのは二度目である。日本語での研究発表は,本科や専攻科で過去に何度も体験しており,緊張はさほどのものではなくなりつつある。しかし,ASET16は英語での口頭発表である。夏休みや授業の合間を有効利用しながらも,出発前夜まで発表準備に追われていたことが記憶に新しい。大連に到着後,テレビや新聞の中でしか知らない世界に,自分の足で実際に立っていることに感動がこみ上げた。しかし,時間の経過とともに,中国の現実が視界に飛び込むと同時に,知らぬ間に日本と中国を比べている自分がいたことも覚えている。発表会場である東軟信息学校は,学内施設及び寮ともに想像していたよりも壮大なものであった。そして発表当日,会場の雰囲気に飲まれながらも,練習を行ってきたことに自信をもちながら,無事発表を終えることができた。そして,初めての英語での質疑応答も冷静に対応することができ,微々たるものながら自信にすることができた。
次に,今回の学会発表を通して,私が最も衝撃を受けたでき事を紹介する。日本はなぜ完璧といえるほど整った環境下で勉強しているにも関わらず,中国に追いつくことができないのか。私は以前から疑問に思っており,そのことについて信じていなかった。その答えは学生の授業に対する意欲を,実際に目の当たりにすることでようやく理解することができた。また,そのことについて妙に納得している自分や,言い訳をしている自分に心底恥ずかしくなった。今後の自分の人生を充実させる上で大変有意義で,一生涯忘れられない体験になるとともに,自分の未熟さを省みるいい機会となった。
2009.10.23