世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

海外視察:ESDに関する意見交換(マレーシア)

日時
平成21年6月22日(月)~6月28日(日)
訪問先
Universiti Teknologi Malaysia (UTM),マレーシアゴム研究所,TAR College,アブラヤシ農園,IOIパームヤシ研究所(民間研究施設),搾油工場(市) ,マレーシアパームオイル研究所(MPOB),ロイヤルスランゴール錫工場,富山県人会
参加者
丁子哲治,清水義彦,畔田博文,伊藤通子
1.目的
 ものづくりにおいて製造プロセスを重視するだけではなく,その副次的な問題に取り組まなければ持続的な開発にはつながらないという視点から,ゴム産業における廃液処理の現状を視察する。
 また、持続可能な産業への転換をめざす一例として,パームヤシの苗木などのプランテーション技術を研究している民間施設を見学し,マレーシアにおける油ヤシ戦略を調査する。
 加えて、高等教育機関との国際学術提携を視野に入れ,学術的な学生間交流を通してグローバルな視点をもつ学生の育成のための交流可能な大学を訪問し,意見交換を行う。
2.日程・内容
1日目(6月22日)
 国内移動 日根野泊
2日目(6月23日)
 日本-マレーシア移動,クアラルンプール泊
 関西国際空港(11:10)-コタキナバル経由-マレーシア・クアラルンプール空港(18:45)
3日目(6月24日)
10:00~12:30
立山マシンの工場の風景

訪問先 立山オートマシン,立山科学エレクトロニクス(セランゴール州シャーアラム市)
応対者 立山オートマシン社長 原田稔氏,立山科学エレクトロニクス社長 野村純氏,立山オートマシン副会長 K. K. Lim氏
概要 立山オートマシン,立山科学エレクトロニクスを訪問し,マレーシアにおける労働,産業の推移ならびに立山オートマシン,立山科学エレクトロニクスにおける事業概要に関する説明を原田,野村両氏より資料を基に説明を受けた。マレーシアにおける労働賃金は上昇しており,インドネシアからの人材を雇用する傾向にある。規模により労働集約型の企業はマレーシアでの活動が今後厳しくなるとの見通しであるという(立山科学グループでは規模、インフラ、人材的にマレーシアでの拠点活動はベストであるとのこと)。その後、工場内の見学を行い,インターンシップの可能性も含め今後の学生教育の方向性について討議を行った。企業側より日本の産業構造ではこれから国内のみでの産業は成り立たず,県内企業においてもグローバル化を視野に入れ高価値・多機種・少量生産の時代をにらんだ人材育成が必要であり,さまざまな民族との相互理解などの協調意識を含めた海外での仕事もこなせる意識付けが重要であるとのご意見をいただいた。 このために,本校の教育活動に協力いただける旨のお話もあわせていただいた。
14:00~17:00
マレーシア工科大学での会議

訪問先 Universiti Teknologi Malaysia (UTM)(クアラルンプール)
応対者 Dr. Abudl Laftiff Mohd Ibrahim (Deputy Director), Dr. Nurullah Kurt(Manager for Middle East), Dr. Noor Azian Morad (Malaysia-Japan University Center) 外4名
概要 相互の組織概要の説明を簡単に行い,富山高専・富山商船側から下記の二つの依頼を行った。
1. ASETにおけるESDという視点からの参加依頼
2. 学術的な学生間交流を通してグローバルな視点をもつ学生の育成に関する協力(スカイプの活用)。その結果,2週間程度の学生の受け入れは可能な範囲であり出来る限り協力をするとの返答を得た。
訪問先 マレーシア-日本大学センター(UTMキャンパス内)
応対者 Dr. Noor Azian Morad (Assoc Prof.),Kazunori Sato (Prof.), Chiken Kinoshita (Prof.), Kunio Ikusa (Prof.)
概要 UTM内に設置されているマレーシア-日本大学センターを訪問し,設置の経緯や目的に関する説明を受けた(日本では外務省が担当するプロジェクト,日本とマレーシアのコンソーシアムによる新しい大学の構築を目的)。この中で研究型の教育だけではこれからの社会に対応できる人材の育成は困難であり,ステークホルダーを意識した教育のサイクルを構築することが重要であるとの考えを共有した。また,UTMの中にはマレーシアの留学生を日本に留学させるための研修機関(マレーシア工科大学高専予備教育センター;PPKTJ)が過去に設置されており(現在は移転),この大学(UTM)が高専と非常につながりのある大学であることがわかった。
4日目(6月25日)
10:30~12:30
ゴムの樹液採取

訪問先 マレーシアゴム研究所(セランゴール州スンガイブロー町)
応対者 Dr. Zaid Bin Isa, Ms Pretibaa Subhramaniyun
概要 マレーシアゴム研究所を訪問し,ものづくりにおいて製造プロセスを重視するだけではなく,その副次的な問題に取り組まなければ持続的な開発にはつながらないという視点からゴム産業における廃液処理の現状説明を,資料をもとに受けた。ゴム廃液の処理はバクテリアによる分解処理がなされており,さまざまな沈殿池において試みられているとの話をうかがった。この説明の後,この施設に学生の受け入れが可能かを訪ねたところ受け入れは可能であり,廃液処理を含めたゴム産業全般における説明と見学には最長で3日ほどの時間を要するとの説明を受けた。また,国際シンポジウムの参加依頼に関しては後日責任者のDr. Zairrossaniと連絡を取り検討することとなった。懇談の後,施設内に設置されたゴム農園,廃液処理沈殿池,ゴム手袋製造工場の見学を行った。
14:00~16:30
ターカレッジでの会議

訪問先 TAR College(クアラルンプール)
応対者 Tan Chik Heok(Principal),Chan Kun Wing(Vice Principal),Lim See Wah(Acting Vice Principal),他5名
概要 相互の学校紹介をまず行った。TARカレッジは国が半分の出資を行っている大学であり,複数の学科からなる学生数28,000人の大きな大学であり,すべて英語で専門の授業を行っているとのことであった。また,説明では実践的な取り組みを数々実践し優秀な学生を多く輩出しているとの紹介もなされた。相互紹介の後,学生間交流の可能性を中心に懇談を行った。TARカレッジは多くの大学と交流をすでに行っているが日本との交流はまだなく,今回の話はすごく興味深いとの反応を得た。具体的には短期の交流は双方のビジネスコースの学生間ですぐにでも可能と考えられ,富山という地は東京と違い物価が安いため非常にありがたいとのことであった。今後,スカイプを用いた交流やホームステイを含めた短期学生交換の検討を具体的に進めていくことで合意した。
5日目(6月26日)
10:00~12:30
アブラヤシ搾油工場

訪問先 アブラヤシ農園,IOIパームヤシ研究所(民間研究施設),搾油工場(市)(ネグリセンビラン州ブキットロカン町)
応対者 グアン氏(農場経営者)他5名
概要 パームヤシの苗木などのプランテーション技術を研究している民間施設の見学を行い,種子から苗木の育成などについての視察を行った。その後アブラヤシ農場の見学を行い,収穫の様子,種子用果実の人工授粉の様子などの視察を行った。その後,搾油工場を訪問し,果実および種子から搾油までの流れの説明と工場見学を行い,アブラヤシからどのようにして油脂が得られるかの視察を行った。
15:00~17:00
訪問先 マレーシアパームオイル研究所(MPOB)(スランゴール州カジャン市)
応対者 Mr. Mohd. Jamil Abd. Rahman
概要 油ヤシの歴史やマレーシアの主力産業としての油ヤシ戦略などの説明を受け,最新の油ヤシ製品の展示見学を行った。その中で,現在油ヤシは油のみでなく樹木やヤシガラにいたるまで製品化されていること,油脂に関しては油脂のみでなく有機材料の原料としても用いられていることの説明を受けた。持続可能な産業への転換をめざす一例として、本校学生にとって良い視察先となる可能性を感じた。
6日目(6月27日)
10:00~12:00
訪問先 ロイヤルスランゴール錫工場(スランゴール州)
応対者 会社案内係
概要 マレーシアにおける錫工業の歴史ならびに錫製品の加工の様子の視察を行った。さらに錫の板金加工の体験を行い錫工業に関する理解を深めた。
19:00~21:00
訪問先 富山県人会訪問(セランゴール州スバンジャヤ)
応対者 三晶技研マレーシア 飛騨是博氏,立山オートマシン 原田 稔氏,立山科学エレクトロニクス 野村 純氏,他5名
概要 新生富山高専がグローバルな人材育成をマレーシアにて進めようとしている計画についての協力依頼をするとともに,マレーシアで事業を展開する各企業より懇談を通してマレーシアにおける民族間の事情,民族雇用バランスや昇給などを含めた人員配置の仕方など日本とは異なる各企業の現状について種々の情報を得た。
 クアラルンプール空港(23:45)-関西国際空港(6月28日,7:15)-富山駅
3.総括
 今回の調査を通してマレーシアは治安がよいこと,衛生面・コスト面において食に関する問題があまりないこと,多民族が調和を保った国家であること,時差や移動コストなど移動に関する問題が少ないこと,多くの日本企業がグローバル展開の拠点としていることなどから,マレーシアはグローバルな視点育成を目的とした学生派遣の地として非常に興味深い地であることの確認ができた。さらに,親日的な国であり訪問したすべての機関が学生の訪問の実現に好意的であることも分かった。
 また,企業インターンシップのみではなく,天然ゴム・油ヤシなどの題材を通して,産業発展の背景にある様々な社会的問題の解決の大切さ,環境調和と将来性を見据えた戦略的産業展開など持続可能な技術開発を学べる可能性が高いとの認識も深めることができた。
2009.6.28