世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

海外視察:北アイルランドとの交流活動(英国北アイルランド)

日時
平成21年3月18日(水)~3月27日(金)
訪問先
北アイルランド バリークレア中高等学校および小学校,ニュータウンアビー市庁舎
参加学生
小西菜穂,平田尚之,川上和樹,桝谷峰旦
引率者
長山昌子,畔田博文,坂本佳紀,宮重徹也
1.目的
日本語クラスでの意見交換/専門科目の授業風景

 この研修は,環境に関する意識調査を通して交流を行ってきた北アイルランドにあるバリークレア中高等学校およびバリークレア小学校を訪問し,生徒や教員との交流を深めるとともに異文化を実際に体験し異文化理解を深めることを目的としている。また,富山高等専門学校射水キャンパスに隣接する東明小学校では,このバリークレア中高等学校と富山高等専門学校の協力のもと,バリークレア小学校に児童作品を送り,交流を広めたいという意欲を持っている。地域社会との繋がりを強め,小学校同士の国際交流を支援することは,高専の学生にとっては実践的に異文化理解を学習することになる。小学校同士の交流の場合,言語が壁になる場合があるが,高専の学生が翻訳補助を行い,実践的な英語学習に繋げることができる。そこで,バリークレア中高等学校やバリークレア小学校を訪問し,高専学生を介した国際交流に関する打ち合わせを行うとともに視察を行った。
2.内容
 これまで交流を深めてきたバリークレア中高等学校およびバリークレア小学校を訪問し,生徒や教員との交流活動ならびにニュータウンアビー市庁舎への表敬訪問を,次のとおり行った。
1. バリークレア中高等学校訪問
  • 日本語クラスへの参加:日本語クラスでは,バリークレア中高等学校の学生から,パワーポイントを使用した北アイルランドの紹介を受けた。北アイルランドの成り立ちや文化,習慣などについて,詳細な説明が行われ,北アイルランドで行われている教育について,理解を深めることが出来た。プレゼンテーションによる紹介の後は,両国学生間において,プレゼンテーションの内容に関する意見交換が行われた。
  • 学内施設や授業風景の見学の内容:教室を主とする学内施設や授業風景の見学を行ったが,授業科目ごとに,専門的な教室などの学内設備が設置されていることが理解出来た。また,日本の教育システムとは異なり,各学生が各自の職業意識に基づいて,専門性の高い科目を履修していることも理解出来た。
  • 専門科目の授業への参加の内容:「歴史」「経営とコミュニケーション」「生物」「科学技術」など,専門性の高い科目の授業へと参加したが,学生の発言を促すような授業が行われていたことが特徴的であった。また,バリークレア中高等学校の学生の多くが,授業中に積極的に自分の意見を主張していることも特徴的であった。
2. バリークレア小学校訪問
協議内容
  1. 小学校同士の具体的な活動内容に関して協議:
    テレビ会議:年2回,バリークレア小学校とテレビ会議をする。
    ・クリスマス・ギフトの交換をし,パーティを行う。ギフトに関して説明し,好みを聞く。
    ・エコクラブの発表を聞いて,日本側は質問に答える。

  2. 地域紹介:
    短い文だが,特徴を捉え地域紹介文を書いて,相互の国の相違点,類似点に気づく。翻訳補助は富山高等専門学校射水キャンパスの学生が行う。
  3. チェーンストリー・ライティング:
    イースターの季節に合わせ,エッグから生まれ出てきたものを想像し,それを具体的に絵に表現し,簡単な説明文を付ける。翻訳補助を富山高等専門学校射水キャンパスの学生が行う。
授業参観を通して
  1. 学習の目的を意識化させることをねらっている。We are learning to~ の頭文字を取ってW.A.L.T.(ウオルト)といい,掲示物,プリントにもロゴとして表示されていた。
  2. 具体的な学習活動を意識化させることをねらった活動を,What I am looking for~の頭文字を取り,W.A.L.F(ウオルフ)といった。低学年のクラスではウオルト人形とウオルフ人形が置いてあった。
  3. 低学年でも高学年でも,授業内容を中心にシラバスが組まれているのではなく,スキルを学ぶことが出来るようになっていた。特にコンピュータを使った授業を進めている場面が特徴的だった。
  4. 自ら考える力を育てることが目標であると力説され,算数の授業では数の構成を考えさせるのに,数に相当する大きさの立方体を使っていた。
  5. グループ,個人の成果を競い高めあうように,シールなどの活用が目立っていた。クラス活動の成果を廊下に掲示し,いつも目に触れるように工夫がされていた。
  6. 交流相手校である東明小学校の児童作品が3ヵ所に掲示されていた。交流の意欲が感じられた。
3. ニュータウンアビー市庁舎表敬訪問
 市庁舎内,議会内を見学の後,応接室にて富山商船・工専とバリークレア中高等学校との交流について説明した後,学生達から日本から持参したふろしきをプレゼントし,ふろしきの使い方について英語でプレゼンテーションした。
 訪問時,Newtownabbey市庁舎は改修工事中であった。この市庁舎は古い紡績工場を改装しているものであるが,旧来の建築物を出来るだけ活用しつつ,必要部分にのみ改修を施すという思想で改修が行われていた。特にレンガ造りの天井などは文化的な価値も高いため,出来るだけ,変えることなく利用しているとのことであった。
議会内見学の様子/ふろしきの説明/左手が改修された新しい建物,右手が古い建物/旧紡績工場の構造をそのまま利用している天井

3. 参加した学生の感想
 これまで環境に関する意識調査を通して交流を深めてきたバリークレア中高等学校を訪問し,異国の地で学生間の交流を行うことにより学生は生活習慣などの文化の違い,人と人とのかかわり方の違いなど多くのことを実体験し,幅広い視点をもつことの大切さを学ぶきっかけとなったように感じる。電子媒体で聞いたり,見たりするだけではなく実際に自分の五感で感じ吸収したことを今後につなげてもらえればと感じる。
 以下に学生が記した体験記の抜粋を記す。
環境材料工学科4年 川上和樹
 私は,今回の英国訪問を通して多くの経験をし,いろいろな人々と触れ合うことで様々なことを学びました。その中で特に印象的であったのは,「北アイルランドと日本の文化・習慣の違い」「北アイルランドにおける地球環境保護への対策」そして「自分の英語力の乏しさ」でした。
 文化・習慣の違いに関しては北アイルランドの家は寿命が長く,それらを大切に守って昔の町並みを守っていることが印象に残りました。地球環境保護に関しては風力発電が日本よりも普及していること,どのコンセントにもスイッチがありこまめに節電を心がけることが出来ることでした。英語力に関しては,交流を深める際,会話を行うのにかなり苦労をしました。このことから,国際的な場における語学の大切さを強く感じました。
物質工学科4年 小西菜穂
 事前の交流を通して,両国における環境に関する意識の高さを感じていた。特に北アイルランドでは規則だから行うのではなく自主的に環境保全に努めるように行動していることを知り関心を受けた。しかし,実際に北アイルランドを訪問し道端に捨てられているごみを多く見かけ驚いた。これは規則に縛られていない分,しっかりとした意識をもたない人がこのような問題を引き起こしているだろうと考えた。
 また,ベルファスト市内やロンドン市内を見学した際,古い建物がそのまま多く残っていることに驚いた。日本では50年ほどで老朽化による建替を行うが,英国では古い建物の内装のみを古い建物であってもそのまま使われている。これらから,歴史や文化をすごく大切にしていることを強く感じた。また,標識なども日本に比べ低く景観との調和も大切にしていることも見て取れた。
 英語に関しては文法を大切にすることも大切であるが,単語だけでも理解してもらえることが多くあり考え込むよりまず伝えようという気持ちを持つことが大切であることを学んだ。
2009.3.27