世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

内モンゴルの沙漠化防止について

平成20年度現代GPフォーラム講演の日本語訳
青格楽(チンゲル) 中国社会教育団体内蒙古大地の子環境保護センター代表
1.内モンゴルの沙漠化の現状
 内モンゴル自治区の面積は118.3万㎢,人口は約2,380万人。そのうち70%以上を占める草原地帯では牧畜が盛んで,従来は移動を繰り返す遊牧型の生活様式が多く見られた。しかし,現在では定住化が進み,また草原の沙漠化が深刻な問題となっている。
 内モンゴルの沙漠の面積は831万ha。80年代より112万ha増加した。毎年8.6万ha拡大している。
 そのため中央政府は,2002年生態系の悪化阻止対策に30億元を投入した。耕地を林地や草地に戻す事業や北京・天津地区の砂嵐対策をはじめ,約133万haの沙漠化防止対策に取り組み,8万人を生態移民させ,その結果生態難民という言葉が出てきた。
 1990年から頻繁に襲うようになった黄砂のおかげかもしれない。しかし,この環境破壊問題は1990年代から突然起こったことではない。なぜなら,1960年代初期,すでに深刻な環境破壊が起きたところもあるからだ。ただし,このような破壊された地域の規模は小さく,被害が現地の住民に限られたため,多くの人達には注目されなかった。そうした,内モンゴルの環境破壊について,多くの場合,過剰放牧・過剰開墾・濫伐採・政策の間違いが普遍的な原因として取り上げられる場合が多い。これらに対する環境保護対策については,「禁牧」「退墾還林」「退牧還草」「植林」など様々な政策が実施されている。ところが,これらの普遍的な環境破壊の原因及び対策があらゆる所で通用するとは限らない事実がある。
 内モンゴルは乾燥,半乾燥地帯であり,牧民が草原の許容量を越えた数の家畜を放牧したために,つまり「過放牧」によって草原の植生が危機になったという見方もあるが、「過放牧」を行っている牧民を移住させて草原を回復させようというというやり方に疑問が残っている。
2.沙漠化の原因
刈り取られた黄柳。良質のパルプや火力発電の燃料として
高額で売れるため,農民の期待も高い。

1. 人口の急速増長
 増え続ける人口による生態環境の破壊がひとつの原因になっている。
2. 不適切な開墾
 無理な農業開発と過放牧の先に待ち受けているのは,いずれも「土壌の破壊」である。畑づくりは,まず地面を耕すことから始まる。この工程で,地表を薄く覆っていた土壌が,その下の砂地に埋もれるように混ぜ込まれてしまう。農作物が順調に育って畑全面が緑になれば問題はないが,元来が農業生産に向かない痩せた土地である。思ったように雨が降らなければ,作物の苗も育ってくれない。そうすると,砂地がむき出しのままの沙漠さながらの状態になるわけである。農業不適地であってもそれなりの収穫を得られるようになっているが,その陰で,貧弱だった土壌がますますやせ衰えていくという事態が進行しいるのである。
3. 地球の温暖化
3.内モンゴル東部地域における環境教育普及事業及びワーキングエコツアーの基盤整備事業
 過放牧や不適な耕作,地下水の過剰使用などの「持続不能な開発」が続けられてきた結果,大地の沙漠化が進み,黄砂が増え,その被害は中国国内のみならず,韓国や日本にも及んでいる。
 こうした状況を改善するために必要なことが2つある。
 ひとつは,内モンゴルの住民自身が,「持続不能な開発」の誤りに気づき,それに変わる「持続可能な開発」の考え方や方法を,自ら見出し実践することである。
 もうひとつは,内モンゴルの人々が持続可能な開発の道を切りひらいていくために,私たちに何ができるかを考えることである。
 この2つを実現するために,2005~2007年の3年間,JICA(独立行政法人 国際協力機構)の<草の根技術協力事業>として,「内モンゴル東部地域における環境教育普及事業及びワーキングエコツアーの基盤整備事業」を実施してきた。2006年4月に行われた第1回の研修会では,今回の目的地,奈曼旗の住民や農民のアイディアにより,
1.「黄柳・麻黄草プロジェクト」(黄柳・麻黄草という,沙漠化の抑制に効果があり,さらに経済効果が高く,貧しい住民の生活が改善できる植物を栽培・普及する)
2.「学校環境教育プロジェクト」(学校の緑化とゴミの分別)
3.「エコツアープロジェクト」
の,3つのプロジェクトが生まれた。プロジェクト3年目を迎えた2007年度には,これらを担う現地のNGO「大地の子環境保護センター」(以下,大地の子)も結成された。2008年度からは,奈曼をモデルケースとして7月のツアーで訪れるオルドスでもプロジェクトを立ち上げている。
4.「大地の子」の設立と今後の取り組み
1)「大地の子」設立の目的
 環境教育,沙漠緑化,環境問題の意見交換や沙漠緑化の方法の宣伝など。
2)「大地の子」では,次の3つの活動への日本の皆さんの参加と協力を呼びかけている。
1.内モンゴル住民への環境教育活動
 たくさんの外国のNGOが植林に来ていますが,それだけでは沙漠化を止めることはできない。その土地にあったものを,その土地にあったやりかたで緑化していくことが必要です。さらに緑化することが貧困にあえぐ農民たちの生活を豊かにするものでなければならない。
 そのためにまず農民の声に耳を傾け,適したやり方と意欲を引き出していく環境教育を広げていく。
2.国際・世代交流緑化活動
 日本人だけで行って植林するのではなく,若者からシニアまで幅広い世代の人たちが,現地の住民や日本語を勉強中の学生たち,さらには中国の東海岸の人たちや韓国の人たちとも交流しながら,楽しく学びあいつつ緑化活動を進める。
3.モンゴル・内モンゴル エコツアー
 緑化と環境教育の活動を広げていくには緑化のための学校や基地,専従者が必要です。活動する者が自ら資金を生み出していくことと,多くの人に沙漠化と農民の子供たちの現実を知ってもらうためにモンゴル圏(モンゴル国,中国内モンゴル自治区)へのエコツアーを行っている。
 農家に民泊したり,住民の活動に参加できることがこのツアーの特色である。
2009.3.16