世界に学び地域に還す,ものづくり環境教育 〜多文化共生・持続的社会の実現に向けた技術者の使命を学ぶための〜

富山工業高等専門学校と富山商船高等専門学校は、
2009年10月1日に高度化再編し、富山高等専門学校が誕生しました。

海外視察:承徳石油高等専科学校(中国)

日時
2008年5月12日(月)・13日(火)
訪問先
承徳石油高等専科学校(中国)
訪問者
青山晶子,宮重徹也
訪問目的
中国での教育プログラム構築に向けて
佐世保高専の例に学ぶ
 青山と宮重は,「日中相互交流による実践的若年技術者の育成」(2005年度現代的GP採択事業)というテーマで中国との交流を行っている佐世保高専を訪問し,情報収集を行った。
 同校のプログラムは,「佐世保市・中国ウェルカム学術研究交流特区」を利用し,中国現地企業・大学・佐世保市近郊の地元企業等を中心に,産学一体となった交流事業を展開するものである。具体的には,交流協定による教員・学生の相互交流事業(廈門理工学院,承徳石油高等専科学校,北京大学化学・分子工程学院)と,国際インターンシップの実施(中国の富士電気化学有限公司と日本の辻産業)の二つの活動に分けられる。なかでも,国際インターンシップは,同校の電気電子工学科の4年生が廈門市・上海市での海外工場見学を実施したり,専攻科学生が職場留学制度を利用して中国企業で体験的に就労するなど,工学技術教育の一環としてカリキュラムに位置付けられている。次代の日中協働のものづくりを担う学生達が,お互いの国のものづくりの現場を経験することの意義は大きく,GP終了後も相互交流を継続させるべく,言葉や費用の対策に乗り出している。
第1回中日高専(高職)学校教育フォーラム参加(2008年5月12日~13日)

 佐世保高専と承徳石油高等専科学校が共催して開催されたフォーラムには,中国から,高専(高職)代表者58名(51校)および河北省教育庁,承徳市政府・教育局代表者6名を含む計64名が,日本からは,高専機構本部河村潤子理事以下2名,高専教員21名(9高専)および佐世保高専事務職員3名が参加した。本GPからは青山と宮重が参加した。
 初日は,承徳石油高等専科学校の王紀安党書記らの両国の高専の校長レベルの講演に続き,承徳石油高等専科学校のキャンパス(一部建設中)見学が行われた。 承徳石油高等専科学校は,北京の北約230kmに位置する承徳市にある。承徳市の人口は約340万人で,世界遺産の避暑山荘と外八廟がある中国の重点名勝地区である。
 承徳石油高等専科学校は,創立100年以上の伝統を誇る模範校である。同校の学生数は約8,000人で,中国全土から受験生が集まる難関校とのことである。「専科学校」とは,日本の高校に当たる「高級中学」を卒業後に進学する就学期間が2~3年の高等教育機関である。
 フォーラム参加者はまず,承徳石油高等専科学校の歴史資料館に案内され,ジオラマで広大なキャンパスの説明を受けた。屋外テニスコートが16面,バスケットコートが6面,5階建ての学生寮が10棟ほどあり,スケールの大きさに驚いた。
 講義棟は,廊下が広く,普通教室でも50人ほどが収容できる大きさがある。午後5時半を過ぎていたが,教室には多くの学生が熱心に勉強していた。
 日系企業は待遇が良いため,日本語を勉強する学生も増えているとのことで,通訳の日本語の教員の日本語は4技能ともに完璧であった。学生とのコミュニケーションは専ら英語であったが,レベルの高さには感心した。
 2日目は,両国の教員による研究発表が行われた。中国側の発表は,高等職業教育の現状や,国際化,改革など管理運営についての発表がほとんどである。自分の専門分野の研究発表を行う日本側の発表とは趣が異なっていたが,中国の教育制度を学ぶ上で有意義であった。
 引き続き行われたポスターセッションでは,参加者の間で盛んに情報交換が行われた。中国の学校についてはもとより,日本の高専での様々な取り組みについても知ることができた。
教育プログラム構築に向けて-「世界に学び,地域に還す」プログラムであるために
 今回見学したのは,承徳石油高等専科学校のみであったが,学生達の勉学への意欲は非常に高く,「経済発展の礎は教育にある」ということを肌で感じることができた。以下,中国での教育プログラムの構築に向け,ポイントとなると思われる点を挙げる。
①技術者育成ESDプログラム
 中国は広く,また,あらゆる意味で複雑多様である。そのため,本GPのテーマにも様々なアプローチが可能である。佐世保高専は,工学技術教育に関する要素を主体とすることで,行政や企業等の支援を得ることに成功し継続的実施につなげた。サステナビリティと工学技術教育をどのように(あるいは,どの点で)結び付け,プログラムの焦点とするかが重要である。
②国際「相互」交流(インターンシップ)
 本GPのキーワードのひとつである「学びあい」が実現できるかどうかが大切である。お互いに何を学びたいかについての共通理解がないと,継続的な実施は難しいと思われる。
③カリキュラムに位置づけること
 単位化すれば,基本的に費用は個人負担となるが,物価の安い中国での実施は費用の面ではさほど問題ないであろう。むしろ,研修先の選定や交渉など,学校側の負担の大きさの方が問題である。平成21年に入り,高専機構も専攻科生と教員を対象とする東南アジアでの企業研修プログラムを立ち上げた(費用は全額機構負担)。機構による「物心両面」にわたるさらなる支援を期待したい。
参考
佐世保高専現代GP(http://www.sasebo.ac.jp/gp/wide/#000336
承徳石油高等専科学校(http://www.cdpc.edu.cn
2008.5.16